PhaseⅡ以上の本邦未承認/海外承認薬の投与
保険制度の限界を乗り越える当院の工夫
PhaseⅡ以上の本邦未承認/海外承認薬とは?
PhaseⅡ以上の治験とは、がん治療における臨床試験の第二段階のことです。既存の保険診療の治療では十分な効果が得られないがん患者さまに対し、PhaseⅡ以上の日本未承認薬を使用することがあります。
当院では患者さまの症状にあった既存の治療はもちろん、未承認薬や海外承認薬による治療も行えます。未承認薬や海外承認薬というと、安全性や有効性を気にされる方もいるかもしれません。当院で使用するのは、エビデンス(科学的根拠)に基づき、院内の倫理委員会を経た安全性や有効性が確実なデータによって裏付けられた薬剤のみです。また、がん薬物療法専門医は、がん治療に用いる薬剤の副作用管理についても専門知識や技術があります。そのため、患者さまにとって安全で効果的な治療をご提供できます。
保険制度における検査と治療の限界
日本の保険制度では、がん治療において遺伝子検査や新薬の使用に多くの制限があります。たとえば遺伝子検査であれば、保険適用されるのは1回のみです。窓口も非常に限られています。治療適用薬が見つかったとしても、保険適用外の薬剤を使用する場合、混合診療の問題が発生します。治療費の負担が大きくなることから、現状の保険制度は患者さまにとって悩ましいものであるといえます。
本邦未承認/海外承認薬の利用における混合診療の課題について
本邦未承認薬や海外承認薬は、特定のがん治療において効果が期待できます。しかし、使用するには、日本の医療制度における法的制約があります。
日本の保険診療制度において、保険診療と自由診療を併用する混合診療は禁止されています。そのため、本邦未承認薬や海外承認薬を使用する場合は、原則として治療全体が自由診療扱いになります。治療全体が自由診療となれば、治療費は患者さまが全額負担しなければならず、経済的負担が大きくなってしまいます。
混合診療の問題は、治療の選択肢を制限する大きな要因の一つです。特にがん治療においては、先進的な治療を受けたいと願う患者さまはとてもたくさんいらっしゃいます。
当院では原則保険診療を推奨しており、できる限り患者さまに負担が少なく、効果的な治療をご提供できるように、さまざまな工夫をしていますが状況に応じて以下で示す様な症例の様に治療を行う場合があります。
治療例
症例
年齢:50代
性別:男性
診断:S状結腸癌 多発肝転移 多発肺転移
治療経過
- 20XX年12月:S状結腸癌、多発肝転移の診断
- 20XX+1年1月:左半結腸切除術+肝転移切除術後
- 20XX+1年6月:術後再発(肝臓、リンパ節、腹膜播種)
- 20XX+1年-20XX+6年:
- FOLFOX+Panitumumab療法
- S-1療法
- Panitumumab療法
- FTD/TPI療法
- FOLFIRI+Bevacizumab療法
保険診療でFoundationOneCDx(組織) 6年前の20XX年の検体で提出。 - Panitumumab療法
20XX+6年4月:肝転移増大、緩和治療の方針で当院紹介
FoundationOneCDx | Guardant360CDx | |
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検体提出日 | 20XX+4年 | 20XX+6年 |
検体 | 腫瘍組織 | 血液検体 |
保険適応 | 保険診療(1回まで) | 自由診療 |
RAS/RAF | wild type | mutant |
TMB | 7muts/Mb | 22muts/Mb(High) |
自費診療でGuardant360CDx(血液)
RASがmutantに変異(Panitumumabに耐性獲得)
TMB-Highに変異:免疫療法(ICI)に効果の可能性
簡単に言うと・・・
「がんの遺伝子は治療に伴い変化」します。
そのため、遺伝子検査を適宜行うことで治療につながることがあります。
保険診療でFoundationOneCDxで検出できていればキイトルーダが保険適応だったが・・・検査提出済みで再度の保険での検査不能(腫瘍組織再検の必要も)自費で検査行う場合は、使用薬剤が結果的に混合診療にあたるジレンマ
エビデンス
Regorafenib plus nivolumab in patients with mismatch repair-proficient/microsatellite stable metastatic colorectal cancer: a single-arm, open-label, multicentre phase 2 study
引用:Marwan Fakih et al : EClinicalMedicine. 2023
奏効率は7%であるが病勢制御率(PR+SD)は38%であり最良効果判定SDの患者(緑)のSpider plotでも6か月以上の長期生存あり
→保険診療にはならないが自由診療でRegorafenib+Nivolumab療法を治療開始。
結果
治療前
治療後(2コース終了後)
肝転移は増悪なく推移し、肺転移は縮小を認めた。
当院でお示しします治療効果に関しては、他の自費クリニックでよくある大きな病院との抗がん剤治療との併診結果ではなく当院で行った治療薬のみの経過です。
効果には個人差があり必ずしも効果を保証するものではありません。
〈平日9:00~18:00〉